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4月桜

4月桜

桜は国花、日本の文化や日本人の精神風土に最も深くかかわってきた花木です。
私たちが桜と呼んでいるのはバラ科サクラ属の品種の総称です。
桜はいろいろな園芸品種が作られ、どの品種も華やかで美しく、気高さを感じさせます。
源氏物語に登場する「紫の上」は「樺桜の君」と呼ばれ、理想の女性像として描かれています。
この樺桜は豪華に咲き誇る染井吉野ではなく、清楚な気品のあるヤマザクラです。

花見と言えば桜の花見をさします。平安時代以降は花と言えば桜です。平安時代の貴族たちは桜の花に心を躍らせ、桜を愛でては歌を詠み、宴を開いて楽しみました。

また、農民にとって桜は田の神様が宿る木で花見は豊作祈願の行事でした。
古来春の訪れと農耕の開始時期を告げる木とされ、その年の稲作を占う桜の開花は、田の神の訪れとみなされました。
桜の下で田の神様を迎えてもてなし、桜の咲き方でその年の収穫を占ったり、種もみを蒔く準備をしたりしました。

やがて、江戸時代になると春の行楽行事として庶民に広がり、酒を酌み交わす花見となっていきました。歴代の徳川将軍は河畔や山に桜を植え、花見の名所を増やしました。品種改良も進み、桜が身近なものとなりました。

現在、日本で植えられているサクラの70%はソメイヨシノです。
ソメイヨシノは江戸時代にエドヒガンザクラを父に、オオシマザクラを母に自然交配した伊豆半島のサクラを江戸の染井村の植木屋が発見し吉野桜と名付けて販売しました。
その後、吉野山のヤマザクラと混同しやすい為、明治33年に染井吉野という名に改められました。
ソメイヨシノは接ぎ木や挿し木で増やしている為、すべてのソメイヨシノは個体差がなく、
開花条件が整うといっせいに咲きます。桜前線ができる理由です。
ソメイヨシノは7月下旬に花芽を付け、最高気温7℃以下の日が一定期間つづいた1月中旬に花芽が動きだし開花に向かいます。
開花から7日程で満開となり、16日ぐらいで散ってしまいます。

サクラの語源のいろいろ
① サクラの「さ」は穀霊(田んぼの神様)を表し、「くら」は神様や霊が宿る場所をさし、その両方を合わせたもの。
② サクラは「咲く」の複数形を意味する。
③ 「古事記」上巻に出てくる山の神「おおやまつみのかみ大山津見神」は
春になると里に降りてきて田の神になるが、娘の「このはなのさくやひめ木花之佐久夜毘売」にサクラの花に姿を変えて稲の穀霊として地上に現れるよう命じた。
この姫神の名前「サクヤ」が転じた。
④ 咲き映えるという意味の「さきはや咲映」が転じた。
⑤ 麗らかに咲く花が転じた。等の説があります。

【啓翁桜】
啓翁桜は切り花用の桜として知られる品種です。
桜の花が、お正月飾りに見られます、12月中旬から3月の真冬に満開に咲く桜の花が啓翁桜で山形県が全国的にも有数の産地となっています。
啓翁桜は支那桜桃(シナオウトウ)とヒガンザクラを交配して作られました。この桜は太い幹が無く株立ちでたくさんの枝が出ます。ほころんだ花は洋風とも思える明るい感じでさわやかな香りもあります。従来は華道の花として広まりましたが、春を先取りした花として、最近はディスプレイ用として、商業ビルやホテル、旅館など様々の所で見る機会が増えています。

桜言葉
さくらが多くの人に愛しまれた証しに、桜にまつわる言葉がたくさん作られています。
情緒豊かな美しい言葉をさりげなく使い、桜の花、季節を楽しみたいものです。

桜雲(おううん)     桜の花が一面に咲きつづいて、遠方からは白雲のように見えること。
零れ桜(こぼれざくら)  散る桜。
桜雨(さくらあめ)    桜が咲く頃に降る雨のこと。
桜色(さくらいろ)    桜の花のような、ほんのり赤い色のこと。
桜陰(さくらかげ)    桜の木の陰。
桜風(さくらかぜ)    咲いた桜の花を吹き散らしてしまう風。
桜蘂(さくらしべ)    桜の花が散った後、枝に残っている雄蘂と雌蘂。薄桃色の花より、桜蕊は濃い紅色をしている。
桜人(さくらびと)    桜を愛でている人のこと。
桜狩(さくらがり)    花見。桜の花を観賞すること。
桜流し(さくらながし)  散った花びらが雨や水に流れていく様子。(花筏)
桜吹雪(さくらふぶき)  桜の花びらが乱れ散るさまを雪にたとえて言う語。
残花(ざんか)      春の名残の 散り残った桜花。
初桜(はつざくら)    その年に初めて咲く桜の花。咲いて間もない桜の花。
花明り(はなあかり)  群れ咲く桜の花のために、夜でも明かりを灯したようにぼんやり明るく見えること。
花嵐(はなあらし)     桜の花が風のように散ること。桜の花時に吹く強い風。
花筏(はないかだ)    水面に散った花びらが吹き寄せられ流れていく様子。
花篝(はなかがり)    夜桜を見るために花の下で焚かれる篝火のこと。花雪洞(はなぼんぼり)ともいう。
花影(はなかげ・かえい) 水面などに映った桜花の影。
花霞(はながすみ)     遠くに群がって咲く桜の花が白く見えるさまを霧にたとえていう言葉。
花曇(はなぐもり)    天気が変わりやすくすっきり晴れない様子。養花天(ようかてん)ともいう。
花衣(はなごろも)    花見に行く際の女性の美しい着物。
花盛り(はなざかり)   花が満開に咲くこと。その季節。全盛期のたとえ。
花便り(はなだより)   桜の花の咲いた様子を知らせる便り。
花散らし(はなちらし)  桜の季節に野外で遊ぶこと。旧暦の3月3日を花見とし、翌日若い男女が集会して飲食すること。
花疲れ(はなづかれ)   花見のあとの気だるい感じ。美しいものをみた充足感。
花時(はなどき)     春いろいろな花の咲く頃。特に桜の花の頃。
花冷え(はなびえ)    桜の咲く頃に急に冷え込むこと。
花人(はなびと)     桜を愛でている人のこと。花見の人。
花筵(はなむしろ)    桜の花びらが一面に散り敷いている様子。
花巡(はなめぐり)    桜の花を求めて山野を訪ねること。
花守(はなもり)     花の番をしている人。
花の雨(はなのあめ)   花見の頃に降るあいにくの雨。桜雨ともいう。
花の風(はなのかぜ)   桜を散らしてしまう恨めしい風。
花の雲(はなのくも)   花と花が満開になってつらなった雲のような様子。桜雲(おううん)ともいう。
花の雫(はなのしずく)  花から滴り落ちる雫。
花の露(はなのつゆ)   花の上に宿る露。
花の雪(はなのゆき)   雪のように散る桜花。
夢見草(ゆめみぐさ)   桜の別名。桜の花の美しさにうっとり見惚れた様子からついた。
夜桜(よざくら)     夜の桜の花。淡い月明かりや雪洞に照らされた、闇夜にうっすらと浮かび上がる桜見物。

桜茶
桜の花びらを塩漬けにしたものをお湯の中に浮かす飲み物です。
華やかで可憐な桜の花びらが一輪浮いた「桜茶」は、日本の美意識をこめた「飲む風流」。その見た目の美しさと、桜の花を使うおめでたい雰囲気から、祝い事で飲まれてきました。
特にお見合いや婚礼では、その場を取り繕う意味である「お茶を濁す」に通じるということもあって、茶を使わず、お湯で作った「桜湯」が尊ばれています。
ほのかに香る桜の風味が心を癒し、目を閉じれば満開の桜が思い浮かぶことでしょう。
また桜茶は特有の成分を持ち、二日酔いをやわらげる効果があるともされています。

桜餅
桜餅は、桜で有名な隅田川の辺にある長命寺の寺男によって作り出された
桜餅はなぜ桜餅かというと、桜の葉っぱが巻いてあるからである。
隅田川は今でもソメイヨシノの名所として知られるが、このソメイヨシノは江戸時代には存在しなかった桜である。江戸時代に「花見」といえばヤマザクラの花を見ることであった。当然、江戸時代の隅田川の辺にはヤマザクラが植えられていて、その葉が桜餅に利用されていた。
しかし、今はヤマザクラではなくオオシマザクラの葉を利用している。オオシマザクラの葉が大きいこと、「クマリン」という芳香物質がヤマザクラの葉よりも多く放出されるために香りがよいことなどがその理由である。
現在、桜餅に使われている桜の葉のほとんどは、ある一つの町で作られている。伊豆半島の西側にある「松崎町」という所だ。
松崎町の農家では「桜畑」というものを持っていて、ここには人の背丈よりも低いオオシマザクラがズラリと植えられている。葉っぱが出てくる五月に葉のつみ取りが始まり、つみ取られた桜の葉は巨大な樽の中で塩漬けにされる。この樽の中で半年ほど漬けられた後、真空パック詰めにされて各地に送られていく。和菓子店では葉を一枚ずつ剥がして手で桜餅本体に巻いて「桜餅」の完成となる。

「桜餅は葉っぱごと食べるのが通」だと一般には言われている。「塩漬け」にしている以上、食い物なのだろうし、「餡の甘さを葉っぱの塩気と共に楽しむ」のが本当の桜餅の味わいともされる。しかし、子供の頃、葉っぱは堅くおいしくなかった。大人になって葉っぱを取り除くのが面倒になり、葉っぱも食べるようになった。葉っぱの香りは桜餅に移っているので葉っぱは食べなくてもいいだろう。

桜とことわざ

明日ありと思う心の仇桜 ( あすありとおもうこころのあだざくら )
桜は明日もまだ美しく咲いているだろうと安心していると、その夜中に強い風が吹いて散ってしまうかもしれない。 人生もそれと同じで、明日にはどうなるかわからないから、頼みにしてはいけない、という世の無常を説いた戒め。
【参考】 下の句は「夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは」。親鸞上人(しんらんしょうにん)の作といわれる和歌。

三日見ぬ間の桜 ( みっかみぬまのさくら )
たった三日間見ない間に、つぼみであった桜は満開になってしまい、満開の桜は散ってしまう。 物事の状態がわずかな間にどんどん変化する。また、この世のはかないことをいう。

散るは桜薫るは梅
桜はさっと咲いてさっと散るところがよくて、梅はいい香りが薫るのがすばらしいという意味。散り方の美しさをストレートにほめたたえています。

月は惜しまれて入(い)り桜は散るをめでたしとす
直接の意味は、月は、まだ眺めていたいのにと、人に惜しまれながら沈み、桜は、花の盛りからたちまち散ってしまうところがいい、というもの。
これが転じて、人も惜しまれているうちに潔く身を退くほうがいい、という教訓として使われるようになりました。
同じような意味のことわざに、「散る時には散るが花」というものがあります。

樺細工
樺細工(かばざいく)とはヤマザクラ類の樹皮を用いて作られる工芸品をいいます。独特の技法によってヤマザクラの樹皮特有の光沢を生かした、渋くて奥深な色合いが、名実ともに伝統的工芸品として広く愛用されています。代表的な製品として茶筒・茶櫃等のお茶道具類、文箱、茶だんす、ブローチ、タイピンなどがあります。
樺細工の語源は「樺」の字から白樺を連想しました。樹皮が白いから白樺。樺は単純に樹皮の事と想像しました。でも、かばは木の名。寒地に産するかばのき科の落葉高木。材は皮のまま細工物とし、また、樹脂に富むので薪材とあった。
樺の語源は、古く万葉集の山部赤人の長歌にたどることができるそうです。ここではヤマザクラを「かには(迦仁波)」と表現しているが、これが後に「かば(樺)」に転化したものと思われます。
源氏物語に登場する「紫の上」は「樺桜の君」と呼ばれ、この時代山桜を樺と言い表していたと想像されます。
この山桜の樹皮が細工物に使用される理由は、桜が他の木にみられない特性を有しているからです。それは、この外樹皮が外観的形態から平滑樹皮のリング状剥離型と分類され、つまりは皮が幾層にも堆積して剥がれにくい性質を持っているという点です。この独自性によって滑らかで強靱、深く渋い光沢、しかも湿気をさけ乾燥を防ぐという特質が生まれてくるのです。
これらの長所を利用した樺細工で、原料となる山桜はオオヤマザクラ・カスミザクラ・ヤマザクラの三種類が今まで確認されてきています。

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