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9月アカメガシワ

9月 アカメガシワ

アカメガシワは、トウダイグサ科アカメガシワ属に属する、5〜10mほどの樹高である落葉高木です。
本来は熱帯系統の植物でしたが、落葉性を身につけることで温帯への進出を果たしたといわれています。
本州以南から中国にかけての地域に分布し,温暖な丘陵地の伐採跡地や崩壊地、林縁などの明るいところに生育している。

樹皮は灰褐色。縦に浅い裂け目がある。若枝は灰色で星状毛は密生する。

葉は互生。葉身は長さ7〜20cm、幅5〜14cmの卵形または広卵形。ふちは全縁または波打ち、ときに浅く3裂する。両面に星状毛があり、裏面には黄褐色の小さな腺点が密にある。葉身の基部には腺体が2個ある。葉柄は長さ5〜20cm、紅色を帯びる。芽生えや若い葉は鮮紅色の星状毛を密生しているが,成長するに従い毛は脱落するため葉色も本来の緑色になる。葉は長い柄を持ち,葉身は倒卵形で,しばしば浅く2~3裂する。

雌雄異株。花期は6〜7月。枝先に長さ7〜20cmの円錐花序をだす。花には花弁はない。雄花は苞のわきに数個ずつつき、萼は淡黄色で3〜4裂する。
雄しべは多数あり、花糸は長さ約3mm。
雌花は苞のわきに1個ずつつき、萼は2〜3裂する。子房は刺状の突起があり、紅色の星状毛と白い腺点に覆われる。
花柱は3〜4個で、乳頭状突起が密生する。乳頭状突起ははじめ紅色で、成熟すると黄色になる。

果実はさく果。直径約8mmの扁球形で、刺状突起が密生し、9〜10月に褐色に熟す。
熟すと3〜4裂し、3〜4個の種子をだす。種子は直径約4mmの扁球形で黒紫色に熟す。

冬芽は、裸芽で、灰色〜褐色の星状毛が密生する。頂芽は大きく長さ1〜1.3cm。側芽は丸くて小さい。葉痕は円形で大きい。維管束痕は多数ある

名前の由来は、新芽が鮮紅色であること、葉が「かしわ」(食物を盛る葉)として利用された、ことから「赤芽柏」アカメガシワと名づけられた。
また、葉の裏側にある二つの蜜腺が赤い目に見えるところからつけられたという説もある。

アカメガシワは、古代から神聖視されてきた、新芽は赤く鮮やかで、やがて葉が大きくなって緑色となり、神事や祭事で食物を盛り付ける柏の葉のように使われたらしい。
伊勢神宮ではミツナガシワと称して神前への供え物をこの木の葉の上にのせる。
また、ゴサイバ(五菜葉)やサイモリバ(菜盛葉)、ゴサイバ(御菜葉),ミソモリバなど,各地で器を意味するその地方独特の名で呼ばれている。
中国では野梧桐とよばれる。

アカメガシワは日本を代表する植物染料の一つで、万葉のころから染色に使用されてきた。
古くからいろいろな植物と併用し、味わいのある黒やグレーを染めていたようです。
藍草で下染めした上に葉と樹皮で染め重ねると純黒色が染まるという。
アルミ媒染で黄茶色、錫媒染で黄色、鉄媒染で紫黒色、銅媒染で焦茶色に染まり、真っ黒な小粒の種子は赤色の染料になる。
10月から11月にかけてよく茂った葉を収穫し、太陽に干して保存する。
しっかり乾燥しておくと1年中いつでも使えます。

また、アカメガシワは古くから生薬(苦味健胃薬)として用いられてきました。
延喜式に記録があり、民間療法の良薬として珍重されていて「切らずに直す腫れ物薬」として、胃炎、胃十二指腸潰瘍等に広く用いられた。

アカメガシワが医薬品の原料として配合された胃腸薬は45年以上販売されています。
その後、平成13年度に行われた厚生労働省の食薬区分制度の改正に伴いアカメガシワの樹皮が食品に使用できるようになりました。
赤い芽や新葉を乾燥させて煎じた汁を飲むと胃ガンや胃潰瘍によく効くといわれ、生薬としても用いられています。
葉にはゲラニイン、マロツシン酸、マロチン酸、種子には強心配糖体のコロトキシゲニン、マロゲニン、コログラウシゲニン、およびパノゲニンなどの配糖体を含むことが知られています。

また、アカメガシワの樹皮には、ポリフェノールの一種であるベルゲニン、ルチン、タンニンが含まれており、胃酸過多、そして胃潰瘍の改善、胃液分泌の抑制、肝臓保護作用などが示されています。
さらに果皮には抗発ガンプロモーター作用、抗ウイルス作用、そして抗マクロファージを持つ成分が含まれています。
また、最近は過敏性腸症候群に対する研究もされており、注目をあつめている成分です。

アカメガシワは山などを造成したら一番最初に生えてくる木である。(そして他に樹木が生えると競争力がないので負けて枯れる)
畑を耕して放っておけば、日本ではやがて森林に遷移していくのだが、アカメガシワは真っ先に生えてくる樹木です。
アカメガシワの強い生命力を象徴するかのように、秋にできる種子は100年以上も土中などで待機して、繁殖の機会を伺っているという。
例えば、森林の伐採後や山林火災の後、真っ先に生えてくるパイオニア・プランツ(先駆植物)であることがよく知られているが、長時間に渡って35度前後の高温環境が続くと、種子が発芽することなどもこれを裏付けている。
アカメガシワの繁殖力は驚異的で、刈り取れば刈り取るほど、翌年は幼樹が密生してしまうともいう。
もともとは熱帯系の植物だったらしいが、落葉性を身に付けることで温帯に適合させてきた、環境に対する強さも秘めていることもわかる。

あかんべの木
アカメガシワは子供遊びで、葉の付け根のところを切り取って目蓋にはさみ、指で押さえなくても”あかんべ”をしたようにできる遊びが紹介されていました。
赤芽柏すなはち”赤芽の木”がいつの間にか”あかんべの木”に訛り子供の遊びになったものと思われます。 

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